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日本ではDTC広告が行われていないのかと言えば、そんなことはありません。

既に、「疾患啓蒙広告」という形で始まっています。

「製品名(ブランド名)」を出さずに、疾患名をアピールすることにより、患者の自覚を促し、医療機関へ受診に行かせることを狙った広告です。

医療機関で受診する患者が増えれば、医療機関で自社製品が処方される回数も自動的に増えます。

「ブランド名」を出す場合に比べたら、回りくどく、宣伝効果もだいぶ下がりますが、間接的に自社製品の売上をアップさせる手法として、多くの製薬企業で採用されている広告手法です。

このように、患者に疾患を自覚させ、治療が可能であることを伝え、受診行動に結びつけることを、「受診行動促進」と呼びます。

なお、「啓蒙」という言葉だと、「偉い人が一般庶民に教えてやる」というような、立場の上下関係が想起されます。

「上から目線」だと言われかねません。

イメージ悪化を恐れ、製薬企業は「啓蒙」を「啓発」に置き換え、「疾患啓発広告」あるいは「疾病啓発広告」という名称を使うようにしています。

 
 

医療用医薬品においては、製品名(ブランド名)自体を広告に掲載することは禁止されていますが、企業名を表示してアピールすることは認められています

そこで、「疾患名」と「企業名」の組み合わせにより、間接的に「製品名」を出したの同様の効果をあげることができます。

DTC広告を見て、良い治療薬の存在を知り、医療機関で受診した患者は、

「テレビCM(または、新聞)で見たのですが、○○○○という会社の△△△に効く薬を処方して欲しいんですが。。。」

と、医師にお願いするかもしれません。

当然、製薬企業側もMRを使って、事前に医師に対して、新薬の情報や広告実施を伝えているはずです。

よほど不勉強な医師でもない限り、製品名(ブランド名)ぐらいは、すぐに思い浮かぶでしょう。

そして、患者の疾患状態が、その医薬品の効能・効果に適合すると判断すれば、患者の要望に応じて、他の薬からスイッチして処方する可能性は十分あります。

製薬企業の新聞広告などで、特定の疾患の特集をしていたり、医師や学者の座談会の記事の協賛をしている場合、実質的かつ間接的な「ブランド名告知広告」をしているのと同じなのです。

具体的な「医薬品名」(ブランド名)が表に出ていなくても、既に「実質的なDTC広告」は、日本でも始まっているのです。

 
 

新聞やちらし、雑誌を通じて、広く一般消費者に対して治験(新薬の臨床試験)の被験者を募集する広告も、普通に見かけるようになりました。

これを「被験者募集広告」と言います。

また、特定の治験に限らず、治験の重要性を訴えることによって、一般大衆の治験に対する不信感を払拭し、 「治験」への参加者を増やすことを目的とした「治験広告」「治験啓発広告」(治験啓蒙広告)も、時々見られるようになりました。

これらの広告に「企業名」が記載されていれば、それも一種の「広告」のようなものです。

製薬企業にとって、治験を実施するだけの技術や資金力、さらには広告を出す企業体力があることを世間に示すことは、一般消費者からの「信頼」や「企業イメージ」の向上につながります。

 
 
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2.DTC広告の規制
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