EDC(Electronic Data Capture)

エレクトリック・データ・キャプチャー
電子的臨床検査情報収集
(臨床検査情報の電子的収集)のこと。

EDCとは、主に治験において用いられる用語で、
臨床検査値等の治験データを
初期段階から電子的に収集し、管理すること。

また、EDCのためのシステムを、
Electronic Data Capture (EDC) system
EDC system
と呼ぶが、
単に、EDCと呼ぶことも多い。


具体的に、
EDCとは、
治験で得られた臨床データを、
担当医師または治験スタッフが、
直接パソコン等の端末に打ち込み、
製薬企業やCROは、
リアルタイムでそれらのデータを常時監視・チェックすることにより、
治験・臨床試験のスピードアップと効率化の実現を目指した仕組み。

EDCシステムとしては、
米国PHASE FORWARD社の「インフォーム」が有名。

CRF
21 CFR Part11
→ EDC関連サイトリンク集
→ バリデーション

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EDC導入の背景

従来の治験では、
治験施設側の医師や治験スタッフ等が試
験データをCRFに手書きで記載していた。

製薬企業やCROのモニターがCRFを回収後、
目視によるQCチェックを経て、
また、モニターが治験施設に直接出向いてCRFを戻す、
という作業が何度も繰り返されていた。

CRFデータ固定後(確定後)、
ようやくデータマネジメント部門で入力を行い、
統計解析部門で解析することができた。
こうして、
全行程では、相当の時間と手間と人手を要していた。

このような手間のかかる複雑な作業手順こそが、
日本の治験スピードが海外に比べて遅く、
しかも割高である要因の一つ
であるとさえ言われていた。

そこで、
どうせ後で入力するのであれば、
初期段階から電子カルテのように、
実施施設側のパソコンに直接入力してしまったほうが
効率的で管理しやすい
として、
先行する海外にならって、
日本でもEDCの導入が始まった。

EDC導入に積極的なのは、合理的な方法を重視する外資系製薬メーカーである。
自社が海外治験で使用しているEDCシステムをそのまま日本に持ち込むことで、
世界統一方式のメリットが生まれる。

国内製薬メーカーも、
国内より先に海外で治験を行う場合や、世界同時治験が増えており、海外CROのEDCシステムを利用すれば、効率化のためにも、国内でもEDCシステムを導入せざるを得なくなってきている。

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データマネジメントの面から見た、EDCのメリット

(1)早期データクリーニング

   データが初期段階から電子化されているので、
   入力段階から、
   入力漏れチェック、
   入力ミスチェック、
   整合性チェック
   などを行える。

   → データ精度向上

(2)異常値対応

   データが常に電子化されているため、
   事前にプログラミングしておくアラート機能により、
   異常値を即座に発見し、
   担当医師や製薬企業が対応できる。

(3)リアルタイムQC

   電子的なチェックができない項目でも、
   常に最新の症例データが本部側で確認できるため、
   リアルタイムのQCチェックが可能になる。

(4)CRFデータ入力の作業(人員・部門)が不要になる。
 
   →スピード向上
   →コストダウン

(5)電子変更履歴
 
   最初から電子化していることで、
   データの変更・修正履歴を電子的に保持できる。
   担当医師がいつ、どのデータを修正したかが、
   すべて明確化される。

   →再現性の向上
   →データ精度の向上

(6)イレギュラーデータ作業の防止

   紙媒体のCRFのように、欄外などに、
   余計なことを担当医師が記入することがなくなるので、
   データマネジメント上のイレギュラーな対応が減る。
   もちろん、モニターや製薬企業担当者も同様。

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製薬企業のメリット

製薬企業(治験依頼者)のメリットとしては、
モニターによるCRFの回収作業
回収後のコンピュータへの入力作業、
の省力化により、

治験業務の効率化
開発期間の短縮、開発コストの削減

また、
モニタリングの質の均質化と向上、
データ入力時の入力ミスチェック等により、
治験の質の向上 が期待できます。

SDV(ソース・データ・ベリフィケーション
    =カルテなどの原資料の直接閲覧による
      症例報告書の検証)
が不要になれば、
製薬企業やCROのモニターの仕事量は激減し、
人的コストの削減が可能となると予測されています。

2004年3月に開催された、
治験推進講習会(大阪医薬品協会主催)では、
EDCの導入によって1製品当たり4.5〜6か月、
開発期間を短縮できる
との報告がありました。

つまり、EDCは国内の治験で、
安い早いうまいを実現する手段と言えます。

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製薬企業のデメリット

最近は、SMOの進出により、
クリニックレベルの医療機関でも
治験を実施するようになってきていますが、
EDCを導入できるような環境ではない医療機関が
まだ多いということです。

その結果、EDCを治験に導入しても、
実際にEDCを使えるのは大規模の医療機関だけで、
小規模の医療機関では従来の方法で治験を実施する
という混在した状態も生まれています。

EDCと従来の方法が混在すると、
管理が複雑になり、単独で実施する場合よりも、
手間が増えて、何の為に導入したのかわからない
という本末転倒に陥ります。

だからと言って、EDCの使用にこだわると、
医療機関を選定する際に
大規模の医療機関に限定されてしまいます。

EDCの開発・ノウハウ取得の為のテスト運用
というのであれば大規模施設だけでも良いのですが、
実際的ではありません。

今後は、医療機関でのEDC導入環境の整備が課題です。

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治験実施施設のメリット・デメリット

治験実施施設のメリットでは、
プロトコルの逸脱防止や
症例報告書(CRF)作成時の質の確保
(カルテからの転記ミスや記入漏れ等)
が期待できます。

しかし、
治験実施施設側でデータ入力しなければならないので、
その為の担当者の配置(CRCが兼任するなど)が必要です。
使い勝手の悪いEDCシステムだと、
逆に手間と時間ばかりかかる
システムの故障による作業中断
といった問題点も指摘されています。

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まだまだ不完全なEDCシステム

EDCを導入した治験が増えて来ていますが、
それらの大部分では、
CRFのデータとして
治験実施施設でパソコンに入力するものの、
入力されたデータを結局紙にプリントアウトし、
医師が捺印又はサインしたものを
治験の症例報告書(CRF)の原本
として担保する方法
が通常用いられています。

しかし、EDCがめざす最終的な姿は、
紙(プリントアウト)を一切使用せず、
電子カルテから自動的にCRFが作成されるシステムです。

データの手入力(入力ミスの可能性)
紙媒体による検査データ管理(資源と労力の無駄)

があるうちは、まだまだ真のEDCとは言えません。

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怖い話

EDCの普及により、
治験におけるモニターの仕事量が減るということは、
製薬企業のモニター削減、
CROへのモニター業務の発注の減少
が考えられ、
製薬企業及びCROにおける、
モニター職の失業者増加が予想されます。
優秀なモニターが少数いれば事は足りるということです。

CROとしても、
従来のモニターを増やして、売り上げを伸ばす
という単純なビジネスモデルが成り立たなくなるでしょう。

規模の大きいCROは既に次のビジネスモデルとして、
EDCの開発・導入に力を入れています。

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EDC運用上の留意点

インターネットというオープンなインフラを利用して、
患者情報という機密性の高いデータを送受信するので、
運用において、非常に注意が必要です。

(1)本人認証

   データを送受信する、あるいはアクセスする人が、
   権限のある本人であることを高度に保証する
   信頼性の高い認証技術、例えば
   バイオメトリクス認証(指紋、網膜、静脈)の
   採用が不可欠です。   

(2)データの暗号化

   インターネットの複数サーバーを経由している途中で、
   データを盗み見られたり、差し替えられないように、
   SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)や、
   VPN(仮想プライベートネットワーク )のような
   暗号化通信技術の利用が必須です。

(3)データの信頼性・正確性の確保

   医療機関の端末からデータ入力したり、
   電子カルテ情報を利用する場合、
   正しい情報が入力・利用される必要があります。   

(4)21CFR Part11への対応

  インターネットを介した電子的なデータ交換であるため    今後の国際的な臨床試験を実施する上で、
  米国で策定された、21CFR Part11
  に対応している必要があります。

   ・ 論理的セキュリティ
   ・ 監査証跡
   ・ 電子署名

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