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ジェネリック」とは、医療機関で処方される薬のうち、先発医薬品(先発品)の特許が切れた後、臨床試験などを省略して認可され、 他の製薬企業から発売される、先発品と有効成分・品質・効き目が同じ(同等)で、より安価の医薬品のことです。

「先発医薬品」に対して、「後発」で売り出されるため、「後発医薬品」(後発品)とも呼ばれます。

優れた先発医薬品に対しては、特許の有効期間(20年〜25年)が切れた途端に、数十種類の後発品が一斉に発売されることも珍しくありません。

→ 先発医薬品(先発品)

→ 薬価/薬価制度

 
 

「後発医薬品」は、通常、一般名(「ジェネリック・ネーム」=成分名)で販売するため、「ジェネリック」と呼ばれます。

略して、「GE」「GE品」「GE製品」と呼ばれます。

特許切れ直後に、ゾロゾロと出てくるので、
日本では「ゾロ」、「ゾロ薬」と呼ぶ場合もあります。

「ゾロ」「ゾロ薬」は、先発医薬品を出す製薬メーカーが、差別的、侮蔑的呼称として用いている場合が多いようです。

「ゾロ」専門の製薬メーカー、すなわち、後発医薬品メーカーは、「ゾロメーカー」と呼ばれたります。

しかし、「ゾロ」はイメージが低いので、最近は、後発医薬品メーカーは、「ジェネリック」の呼称を普及・定着させようと、業界イメージアップに努力しているようです。

また、実際、製薬業界でも、「ジェネリック」の呼称を使用することが一般的になってきています。

 
 

ジェネリック医薬品を販売するためには、製造した後発品の安定性と、先発品との生物学的同等性を、試験、臨床試験によって証明する必要があります。

生物学的同等性
生体内における薬物の吸収パターンが同じであること、つまり、薬の効き目が同じであること

→ 生物学的同等性試験

基準をクリアすれば、当局(厚生労働省)から医薬品としての承認を受けることができます。

後発品の場合、生物学的同等性試験のような、小規模の臨床試験を実施するだけで済み承認審査も簡素化されます。

そのため、後発品メーカーは、先発品に比べて研究・開発費及び時間をほとんどかけずに、先発品と同等(同じ成分、同じ品質、同じ効き目)の製品を、より安価で市場に販売できるのです。

先発品の開発費用が、150〜200億円もかかるのに対して、後発品の開発費用は、わずか数千万円であると言われています。

コストがかかっていないので、安く販売できて当然なのです。

また、探索的な研究開発がないこと、臨床試験の数が少なくて済むことから、後発品は先発品よりも短期間で上市することができます。

先発品が上市まで10〜15年を費やすのに対して、後発品はわずか3〜4年で市場に出すことができます。

先発品の特許が切れるやいなや、ゾロゾロと後発品が出てくるのは、

● 成分を真似するだけで良いので、
  開発コストがあまりかからないこと

● 開発リスクがないこと
  (効き目の有無、
   薬物有害反応は、
   先発品で分かっている)

● 必要な臨床試験の数・種類が少なく、
  期間も短いこと

● 審査が簡略されていること

● 審査期間が短いこと

という、後発品メーカーにとっては、至れり尽くせりの「良い条件」がそろっているからです。

 
 
2005年度のジェネリックの医療用医薬品にしめるシェアは、

数量ベース・・・17.1%
金額ベース・・・5.1%

(医薬工業協議会調査より)
 
 

政府としては、安い「ジェネリック」が市場に出回る方が、医療費全体を抑制できるので、支援する方向にあります。

先発品メーカーにとっては、政府がジェネリックを後押しするのは、たまったものではありません。

しかし、ジェネリックが普及することによって、少なくとも1兆円の医療費を削減できるそうです。
(2005年現在の国民医療費32兆円における医薬品費は、約2割の6.9兆円)

試算例)
2007年5月16日に財務省で示された試算によると、後発医薬品のある先発医薬品を
すべて後発品(ジェネリック)に切り替えることで、薬剤費を約1.3兆円削減できる。
(財務制度等審議会・財政構造改革部会)

※仮定条件
・薬剤費=約7兆円
・後発品のある先発品の金額ペースシェアを36%
・後発品の価格が先発品の半分

厚生労働省の数値目標

数量ベースシェアを上げる

  2004年度  16.8%
           ↓
  2012年度  30% (以上)

※厚生労働省 2007年5月15日発表
 「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム」より

 
 

ジェネリック医薬品の薬価(医療機関に販売される薬の値段)は、先発医薬品の8割以下と定められています。

中には、半額以下の安価な製品もあります。

薬価が低ければ、当然、患者の自己負担額も軽減されるので、患者にとっても「ジェネリック」を処方してもらう方が「お得」なのです。

特に、高血圧や糖尿病、高脂血症のような
服用期間が長い疾患の治療薬や、抗ガン剤のように値段が高い医薬品では、ジェネリックの価格メリットは大きくなります。

 
 

既に有効性・安全性が確立された先発品と同一成分でありながら、安価で提供されるのが、ジェネリックです。

「効く」「安全」「安価」がジェネリックの三大特徴。

そのメリットは先にも述べた2点がまず、あげられます。

@ 医療費の削減・抑制

これは、国家財政的メリットと言えるものです。

ただでも高齢化で国家財政を圧迫している医療費を抑制するためには、医療現場でジェネリックをなるべく使ってもらうにこしたことはない。

A 患者の自己負担額の軽減

 WHOでも貧しい人々の医療へのアクセスを高めるためにジェネリックの推進を勧告しています。

B 先発品メーカーに新薬開発を促すこと

もし、先発品メーカーが、ずっと同じ薬から莫大な収益をあげられる状態だと、冒険しなくなり、新薬開発への意欲が落ちてしまいます。

それでは、より有効な医薬品、効果の高い治療薬が見つかっていない医薬品が生まれません。

医療の進歩のためには、先発品メーカーに絶えず新薬開発に向かわせる必要があるのです。

ああ、先発品メーカーはつらいよ。。。

 
 

@ 致命性・影響度の低い疾患

鎮痛薬やビタミン剤のような補助的な薬、症状を緩和する効果のある薬では、安価なジェネリックに代替されやすいと考えられます。

A 投薬期間の長い疾患

投薬期間が長いとそれだけ薬剤費もかさむみます。

今後は、当局からの指導も強くなり、ジェネリックが処方されるようになると考えられます。

また、患者としても、薬剤費削減のため、安価なジェネリックを選ぶようになります。

長い間使っていれば、その分、安心度も高まるからです。

@ 致命性・影響度の高い疾患

生命にかかわるような重症疾患の場合や身体・精神に重大な影響を及ぼす可能性のある治療の場合、医師は、安全性を優先し保守的な治療を選びます。

つまり、ジェネリックよりも先発品を優先して使います。

患者としても、「万一のことがあったら」と考えて、先発品を使いたがるでしょう。

A 投薬期間の短い疾患

 投薬期間が短いなら、全体の支払金額もそれほど高くはならないので、多少高くても先発品でいいと、医師も患者も考える傾向があります。

 
 

@ 品質とイメージ

後発品と言えども、品質はかなり向上してきています。

あとは、イメージ的な部分が大きい。

いわば、純正品とサードパーティの違いというべきでしょう。

A 同等性

ある研究機関の調査によると、先発品といくつかの後発品を溶出試験等で比較したら、異なる結果が出た後発品があったそうです。

たとえ薬剤の成分が同じであっても、コーティングや添加剤などの製剤技術は異なります。

先発品の含有成分は公開されているので真似できますが、コーティング技術や添加剤の配合技術は秘匿されているので、完全に真似するのは困難です。

後発品メーカーが先発品と全く同質の医薬品を作ることは不可能。

そのため、後発品を使用した場合、先発品とは多少異なる効果が現れる可能性が、それなりに残っているのです。

これは、「後発品は先発品に比べて劣る医薬品である」という意味ではありません。

後発品は先発品と非常によく似てはいるが、微妙に異なる医薬品である」ということです。

しかし、その微妙な差異が患者にどのような影響をもたらすかについては、残念ながら、あまり議論されていません。

B 安定供給体制

医療機関としては、安定的に供給される医薬品を選びたいという気持ちがあります。

儲からないからと、突然生産中止してしまうようでは、例え価格が安くても、安心して使えません。

そのような無責任な後発品メーカーが実際存在すると、医療機関からの信頼が低くなって当然です。

いかに、医療機関の信用を高めていくかが、ジェネリック業界にとっての今後の課題です。

C 販売単位の柔軟性

医療機関から、小口包装による供給が望まれています。

コストを下げるには大口包装の方が良いのでしょうが、使う医療機関の立場としては、いろいろな選択ができると便利なのです。

D 適正使用の情報量(情報提供・収集体制)

先発医薬品と後発医薬品の添付文書の情報量には格差がある、と指摘されています。

薬物動態(血中濃度など)、薬効薬理、参考文献数などにおいて、先発医薬品よりも情報が少ないとのことです。

医療機関側としては、これらの情報が少ないと、特に初期導入時の不安が大きいのです。

後発品メーカーは、添付文書情報の充実を図る必要があるでしょう。

しかも、上位の大手後発品メーカーだけでなく、後発品業界全体で取り組まなければ、後発品への信頼性は向上しません。

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ところで、ジェネリックを低価格で販売できるのは、研究開発費・臨床開発費をかけずに済むだけでなく、MRの人数を抑えて低コスト運営できる点も大きい、ということに注目する必要があります。

情報提供を充実させるためにMRを増やせば人件費がかかり、それが経営を圧迫することになります。

低コストで効率的かつ効果的に適正使用情報を提供して行くにはどうしたら良いかが、今後の大きな課題と言えるでしょう。

医薬卸の機能を最大限に活用するのもその1つです。

E その他

シートに薬品名や識別コードを記載して欲しいが、対応してくれる後発品メーカーは少ないという声があります。

そういう顧客への細かな対応においては、先発品メーカーに一日の長があると言えます。

 
 

後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進が国の方針になっています。

2002年4月より、

@ ジェネリック医薬品を処方した分業医療機関に対しては、経済的インセンティブを導入

A 患者の自己負担率の増大(勤め人は2割→3割負担)

B 国立病院などへのジェネリック医薬品使用促進の通知

C 特定機能病院へのDPC導入

のような施策が行われた結果、ジェネリックの採用が促進されています。

 
 

ジェネリック対策は、医薬品のライフサイクルマネジメントにおいて、避けて通れない問題です。

どの先発品メーカーも頭を悩ます問題で、製品のライフサイクルに多大な影響を及ぼします。

→ 医薬品のライフサイクルマネジメント

@ 徹底抗戦

一定のシェアを確保し続けられるよう販促努力する。

有効性・安全性情報の蓄積や情報提供体制、物流体制を武器に徹底抗戦します。

そして、ジェネリックの撤退を辛抱強く待つのです。

A 勇気ある撤退戦略(自然消滅)

徐々に他製品に販促の重点を移していきます。

B 製品価値の拡大戦略(積極的戦略)

● 適応症拡大(効能追加)
● 剤型追加
● 用法、用量の変更(追加)

を実施することにより、ジェネリックとの差別化を行い、製品群(ブランド)としての価値拡大を狙います。

医師のブランドロイヤリティの維持・向上が期待され、ブランドシェアの維持、うまくすればシェアアップが見込めます。

C 法的手段を使った牽制

通常、ジェネリックは、先発品の特許切れ直後に一斉に発売されます。

しかし実際には、ジェネリックの開発は、先発品の特許切れ前に実施している可能性が高いのです。

そこを突いて、先発品メーカーがジェネリックメーカーを特許権侵害で訴える場合があります。

ジェネリックメーカーへの牽制手段としては、意外と効果があり、ジェネリックの立ち上がりの出鼻をくじくことができます。

三共がメバロチン特許切れの際に使った方法です。

 
 
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