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健康保険で認められた
範囲内の診療行為に対しては、
健康保険で所定の割合を負担し
(例えば、会社員の場合は7割をカバー)、

健康保険の適用範囲外の診療行為に対しては、患者自身の自己負担で診療費用を支払うこと。

診療費用において、
個々の診療行為の内容に応じて、

(1)保険が適用できる診療
  (保険診療) 
   ・・・健康保険+一部自己負担

(2)保険が適用されない診療
  (自由診療)
   ・・・自己負担のみ

という、

保険診療と自由診療の2種類の費用負担方法を組み合わせる(併用する)ことを認めた診療体系

患者が一部自己負担するだけで、
残りは、健康保険でカバーされる診療を、
保険診療」と言います。

一方、保険が適用されない、
患者が全額自己負担して受ける診療を
自由診療」と言います。

 
 

残念ながら、現在の日本の保険制度では、
「厳密には」混合診療は認められていません。

保険診療と自由診療の二者択一ということです。

もし、健康保険の範囲内の診療と健康保険の範囲外の診療が混在した場合は、たと範囲外の診療がわずかであっても、自由診療と見なされてしまいます。

その場合、初診にさかのぼって、患者の全額負担(健康保険からの負担は一切なし)
となり、高額の医療費を請求されることになります。

もちろん、ここでは、保険の適用外となるので、「高額療養費制度」も当然、適用されません。

→ 高額療養費制度

しかし、状況はだいぶ変わって来て、
健康保険法改正により、2016年4月から
「患者申出療養」
(保険外併用療養費制度)
が解禁されました。

以下、Wikipediaの記述
(2020年3月18日時点)

保険外併用療養費とは、健康保険法等を根拠に、日本の公的医療保険において、被保険者が保険給付の対象外のものを含んだ療養について、保険対象部分の保険給付を行うものである。

日本の保険医療では混合診療が禁止されていて、保険外診療を受けた場合は保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となる(医療保険各法による「療養の給付」を受けることができなくなる)。

しかし、保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める療養については、保険診療との併用が認められており、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用については、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については(※被保険者が)一部負担金を支払うこととなり、残りの額(※=被保険者が負担しない部分)は「保険外併用療養費」として保険者から給付が行われる。

※の部分は、治験ナビ運営者が補足

とはいうものの、
厚生労働省としては、
あくまでも国民皆保険制度は維持しつつ、国民の医療負担を軽減するための措置であり、混合診療を無制限に解禁するものではない、
というスタンスをとっているとのこと。
 
 

1つは、国民への平等な医療を保障すること。

混合診療を認めれば、お金持ちばかりが、高度な医療の恩恵を受ける、という不平等(医療格差)が生じます。

それを防ぐことが、「混合診療の禁止」の重要な目的です。

そこには、「医療における機会均等」という考えが根底にあります。

一方、お金に多少余裕のある人にとっては、お金があるのに充実した医療を受けられないという「医療を受ける機会の喪失」という矛盾も発生します。

(もっともそれは、本当に裕福な人なら、自由診療で多額の医療費を払えばいいのだけれど「そこまでのお金はない」、という中流階級の人の場合でしょう)

いずれにせよ、「混合診療の禁止は、平等主義の弊害」との指摘の声が上がっています。

また、お金に余裕が無い家庭であっても、なんとか節約・工面して医療費を捻出して、大事な家族に少しでもいい医療を受けさせたいという、庶民のささやかな願いがかなえられない、という問題もあります。

保険適用外の部分の診療の内容がどれほどわずかであっても、 一律に全額自己負担にしてしまうのは硬直的だ、という「程度」の問題も指摘されています。

 
 

混合診療が認められていない2つ目の理由は、一般的な健康保険ならば決して認めたりしないような、「安全性及び有効性が確保されていない悪質な医療行為」の蔓延を防止するためです。

@の理由が平等権的な意味合いが強かったのに対し、こちらの理由の方は健康保護的な意味合いがあります。

一般に、保険適用されないような医薬品や医療技術は、有効性や安全性に問題があると評価された場合が多いのです。

そのような医療行為が無規制で行われれば、副作用や医療事故など、重大な健康被害が発生する可能性があります。

それならば、混合診療を規制することで、患者を健康被害から守ることのほうが、当然優先されます。

 
 

万一、混合診療が解禁されれば、

科学的根拠のない
あるいは、エセ科学的な
思い込みが多分にある
時には宗教と結びついた
怪しげな「民間療法」
一気に広がることが予想されます。

安全性が確認できない治療が行われることによって、それが原因で患者に健康被害が発生した場合、その治療のために、社会保険が適用されて、結果的に国民医療費が増える可能性があります。

患者の健康面からだけでなく、国家財政的な面からも、混合診療は望ましくないと考えられています。

 
 

患者にとって治療の選択肢が増えます

意欲のある医師によって、日本にいながら海外の先進的な高度な医療を、一部保険を適用することにより、妥当な金額で受けることができます。

現在の保険制度では、保険診療では、それほど治療費は高額にならない代わりに、一定水準までの医療までしか受けられません。

一方、非保険診療では、高度の医療が受けられる代わりに、高額の医療費の全額自己負担が必要になります。

患者の医療の選択の自由を尊重しつつ、医療保険制度への影響をできるだけ抑えるには、混合診療の解禁が最も妥当な落としどころであると考えられます。

ただし、
最新の高度で効果の高い治療法ならばともかく、医療の知識の無い患者を、悪徳民間療法から、どうやって守るか?
この対策が万全という前提があります。

そのためには、
公の機関が事前に審査し、安全面や効果面で問題がない療法にのみ混合診療を認める
という「限定的混合診療」(承認制混合診療)が最も妥当な落とし所だと言えるでしょう。

 
 
保険外併用療養費制度
高額療養費制度
先進医療の概要について
(厚生労働省HP)
 
 
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