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患者が自分に投与されているのが、薬効成分のない「プラセボ」であると知ったら、がっかりして、気力が萎えて、病が悪化することさえ予想されます。

それでは、「被験薬」の効果を、正確に検証することはできません。

「プラセボ」では治験に参加する意味がないと感じて、治験参加を中止(「脱落」)する被験者も出てくるでしょう。

→ 脱落

プラセボ投与群の被験者数が大きく減れば、有効性の評価ができなくなり、治験の存続自体が難しくなります。

逆に、自分に投与されているのが、「プラセボ」ではない、つまり、薬効のある「新薬候補物質」だと分かれば、本当は、たいして効果のない物質であっても、病状は良好に向かってしまう可能性があります。

なぜなら、投与されているのが本当は「プラセボ」であっても、「薬」だと告げるだけで、病状は良好に向かってしまうからです。

実際に、「痛み」など自覚症状が中心の病気では、半数近くの方が「プラセボ」を服用しても、改善してしまうというデータが得られています。

※ このような、「プラセボ」(偽薬)であっても、思い込みで治癒してしまう効果を、「プラシーボ効果」と呼びます。

→ プラシーボ効果

昔から「病は気から」というように、人間の心理的な力は、病状を大きく左右するほどまでに強いのです。

このような、疾患症状への心理的影響を防ぎ、また、脱落を防ぐため、プラセボかどうかは決して被験者には教えられないのです。

脱落
プラシーボ効果
 
 

では、治験担当医師に対しても、「被験薬」なのか、「プラセボ」なのかを知らせないのはなぜでしょうか?

もし治験担当医師が、患者に投与している治験薬が「プラセボ」であると知れば、副作用の心配がなくなるので、安心しきって、診察・治療に力が入らなくなります。

その結果、疾患が逆に悪化する可能性だってあります。

逆に、患者に投与している治験薬が「被験薬」であるとわかれば、「新薬候補だから、あるいは、薬効成分が含まれているのだから、効くはずだ!」と無意識に思ってしまいます。

期待感から、診療・治療への積極性が高まることによって、患者の病状が良好へと推移してしまう可能性があります。

教育心理学用語ではこれを、「期待効果」あるいは「ピグマリオン効果」と呼んでいます。

例えば、本当は知能指数の高くない子供のことを「知能指数」が高いと教師に告げると、教師は「お前はもっと勉強ができるはずだ。」と、一生懸命勉強を教え、励ますので、結果的にその子供の学習能力は高まるという実験結果があります。

これは、医者と患者の関係にもそっくり当てはまります。

治験担当医師に、「被験薬」なのか「プラセボ」 なのかを知らせないのは、医師側の「期待効果」を取り除くためなのです

また、医師が知ってしまうと、それがつい「態度」や「表情」に出てしまいます。

患者も医師の態度や表情などから、自分に投与されているのが、「被験薬」なのか「プラセボ」なのかを、理解して(察して)しまうことも考えられます。

時には、医師自体がうっかり、「被験薬」なのか「プラセボ」なのか、口を滑らして、患者に知られてしまうこともあるでしょう。

こうした、医師の態度やうっかりを完全に防ぐ意味でも、医師に対して、プラセボかどうかは知らせない方が良いのです。

 
 
プラセボとは?
プラセボ対照試験
ヘルシンキ宣言におけるプラセボに関する記述
 
 
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